30-25 天下の高島屋B1階
訪れた者を虜にする。高島屋の赤い薔薇はそんな魔力を秘めていると思う。
何年か前に高島屋で働いていたことがある。
新人研修として高島屋のイロハを学ぶため、高島屋本店がある日本橋へ赴いた。
研修は日本橋店で行なうわけではなく、近くにある借り上げたビルで行なわれたのだが、帰りに勉強と称して高島屋日本橋店に寄ってみた。
もちろん目指すは地下1階の食料品売り場である。
都会で、更には夕方とあり、売り場は人でごった返していた。人の波を縫いながらめぼしい商品をまるで餌を探すハイエナのように、目をギラギラさせながらフロアを何周もした。
そして、高島屋が特別な場所なのだということを改めて感じたわけである。
高島屋が好きなマダムは包装も高島屋のものに拘る。
それぞれテナントの自社ラッピングはあるのだけれど、マダムたちは高島屋の包装紙で包んで欲しいと言うのだ。
そしてそれを大層大事そうに持ち帰り、大事な人へ特別な贈り物として渡すのだろう。
かくいう私も日本橋の高島屋でたんまりスイーツを買った際には高島屋の紙袋に入れてもらって、ほくほくしながら帰ったものだ。
銀座ウエストで買ったルビーのように真っ赤なイチゴジャムが乗ったヴィクトリアという名前のドライケーキがとても印象的で、今でも定期的に食べたくなる。
ちょっと特別を感じられる高島屋は何年経っても天下の高島屋だ。