30-19 ほろ苦い思い出の榮太樓飴
あの飴が榮太樓(えいたろう)飴だなんて名前があることに今回この記事を書くにあたり、初めて知った。
あれは20年程前に遡る。
当時小学生であった私は、共働きで忙しい父と母に代わり祖母に育ててもらっていた。
そうするとおやつはマーブルチョコやコアラのマーチなんて子供向きでポップな物より、餡子を砂糖でまぶしたあんこ玉や、浪花屋製菓の柿の種、オブラートに包まれた固いフルーツミックスゼリーなど、やたらと渋い昭和なお菓子が常であった。
その祖母セレクションのおやつの中でも一際異彩を放っていたのが、この榮太樓飴である。
まず小学生は自分から榮太樓飴は選ばないであろう。
飴が入っている缶からして渋いフォルムである。
そして食べ終わった空き缶は祖母が薬入れか何かにしていた。
しかし、この飴が予想に反してべっこう飴のようでとても美味しく、当時の私のお気に入りであった。
そして私はとんでもないことをしでかす。
当時、親友と休み時間は音楽室で遊ぶことが日課であった。
そこで私は何を血迷ったか、密かに学校に持参してきていた榮太樓飴を取り出したのである。
飴の缶を見て親友は大喜び。
2人で舐めていると、すさまじいタイミングで何も知らない担任の先生が現れた。
「何してるの?」とニコニコしながら訪ねてきた顔が、私が持つ榮太樓飴を見て一変、赤鬼のような般若のような顔に変わったことを20年以上経つ今でも忘れることが出来ない。
そしてその後から現在に至るまで、榮太樓飴を口にした記憶がない。
恐ろしくて記憶が抹消されているのかもしれない。
なので私は榮太樓飴を見ると今でもほんのり切ない気持ちになるのである。
これを機会に食べてみようかな。